なぜ、買取と販売をつなげたのか。
それは、「循環」が文化を守るからです。
年配の方から「昔はもっと良い道具があったんだよ」と言われたことはないでしょうか?ある日、その言葉を実感できる出来事がありました。家のエントランスで子どもと夏休みの工作をしていたのですが、近所の元大工のお爺さんが道具を貸してくれたのです。その中でも、ノコギリと錐(キリ)には驚かされました。良い道具とはこれのことかと感動しました。私も道具好きなので安くはないものを揃えたのですが、まったく切れ味が違うのです。吸い付くようなフィーリングとはこのことかと驚きました。お爺さんのお子様は会社員で遠方に住んでいて、どうやら大工仕事にも興味がない様子。あの道具はどうなるのだろう。そう思いを巡らせると、日本中で良い道具が失われていくのだと気付きました。
また、ご縁があって最後の手斧(ちょうな)鍛治と呼ばれた故・高木順一さんとお話しさせていただく機会がありました。高木さんは、竹中大工道具館に展示する予定だった江戸時代の道具の復元をしたらしいのですが、「私は今、たくさん手斧を作ろうとがんばっているんだよ。江戸時代の元の道具が残っていたから、私がそれを見て復元できた。ということは、手斧が一時的になくなっちゃうかもしれないけれども、未来に誰かが私の手斧を見つけたら復元できるかもしれない」とおっしゃっていました。
道具は、約200万年前に人類の祖先が使い始めたそうです。以降、悠久の時を経て進化し続けてきました。今、人類が生み出した良質な手道具・手工具は機械化や効率化の中で失われつつあります。ならば、失われそうな道具を救うことと、製造を続けるメーカーのサポートをしたい。道具を循環させていこうと考え、KAIKAE.JPを作ることにしました。ロゴには、循環の様子とオーナーが変わっていく永続性を込めています。
さらなる循環を目指して。
2023年10月にKAIKAE.JPのプロジェクトをスタートさせました。事前の準備段階から気付いていたことですが、買取させていただいた刃物の中には大量の錆に侵食されているものも多々見受けられます。ただ、どうにかしてこれを救えるのではないかというものも中には混じっています。2023年はプロジェクト立ち上げに邁進してまいりますが、2024年にはこれまで我流だった研ぎをきっちりと鍛冶屋さんや研ぎ師さんに学び、救える道具をもっと増やしていこうと考えています。
※ご協力いただける専門職の方に快諾いただきました。
道具と工具の未来を育み、伝統を守る。
私たちの視界の先にあるビジョンは「伝統を守り、伝承すること」です。まだ、これを語るには実力不足の存在ではありますが、刃物や道具を使う文化が少しでも後世に受け継げるようにビジョンとして掲げます。こうしている間にも一歩踏み出すことこそ大切と考えています。